キッチン周辺のレイアウトを考える際に、つい見落としてしまいがちなのがキッチン家電の配置です。
特に最も大きいキッチン家電である「冷蔵庫」について、
・「設置位置をどこにしたらいいか迷っている」
・「冷蔵庫が使いやすい配置が分からない」
といった悩みを持つ方は多いでしょう。
冷蔵庫の位置はキッチン全体の使い勝手を大きく左右するため、自分に合ったレイアウトを検討することが大切です。この記事では、冷蔵庫の最適な配置や注意したい重要なポイントを解説します。
キッチンのレイアウトを考える上で冷蔵庫の位置が大切な理由とは?
冷蔵庫は新居に引っ越す際に設置するため、いざ運び入れてみると物の出し入れがしにくかったり、予想よりもキッチンが狭いと感じたりするケースが少なくありません。
事前に冷蔵庫の位置をしっかり検討しておく理由は、次のような問題が起きることをできる限り防ぐためです。
・冷蔵庫の中身がリビングから丸見えになってしまう
・においが広がる
・扉を開けた時、邪魔になる
・放熱の効率が悪くなり庫内が冷えづらくなる
それぞれ詳しく解説します。
冷蔵庫の中身がリビングから丸見えになってしまう
キッチン本体の周囲が壁面にまったく接していないアイランドキッチンや、コンロ側のみ壁に接しているペニンシュラキッチンは、キッチンに立った時前面に壁がありません。
ダイニングやリビングを見渡せて、家族や来客との距離も近いため、開放感がある点が人気の理由のひとつです。
しかし逆に言えば、キッチンの様子がダイニングやリビングから丸見えになってしまいます。
調理中は食材や調理器具などで散らかりがちで、シンクに洗い物もたまるため、どうしても生活感が出やすいです。
においが広がる
冷蔵庫をダイニングやリビングに近い位置に置いている場合は、冷蔵庫を開けた時に食材のにおいが出てダイニングやリビングに広がる可能性があります。
脱臭機能がついている冷蔵庫でも独特のにおいをかすかに感じることがあり、気になる方もいるかもしれません。
特にキッチンとダイニングやリビングの間に壁が少ない開放的な間取りだと、においの広がりを遮るものがないため広がりやすいです。
扉を開けた時、邪魔になる
冷蔵庫の扉の開閉パターンには片開きと両開きの2種類がありますが、注意したいのは片開きタイプです。
片開きタイプは冷蔵庫の横幅分の扉を動かすため、大きく開きます。食材を取り出すための動作スペースを加えると、設置位置によっては通路の妨げになりやすいです。
放熱の効率が悪くなり庫内が冷えづらくなる
冷蔵庫を置く位置によっては、冷却効率が低下することがあります。
たとえばコンロの横に冷蔵庫を置く場合、距離が近すぎると調理中にコンロから発生する熱が冷蔵庫に伝わりやすくなり、冷却効率が下がりやすいです。
コンロからの熱の影響を受けにくくするために、コンロから最低でも30cmは離すのが望ましいでしょう。
コンロの位置は、システムキッチンの場合は本体の端から15cm、セパレートキッチンの場合は2~3cmが一般的ですので、お使いのキッチンのコンロ位置を確認してください。
冷蔵庫を直射日光の当たる場所に置くのも、冷却効率を下げる要因になります。
直射日光が冷蔵庫に直接当たると、冷蔵庫本体の温度が上がりやすくなるため、キッチン内に窓がある場合は窓から直射日光が当たらない位置に冷蔵を置きましょう。
意外と見落としがちなのが、冷蔵庫の放熱スペースです。
冷蔵庫は側面もしくは背面から冷却のために発生する熱を放出するため、必ず放熱スペースが必要です。
放熱スペースを考慮せず左右や後ろにすき間が取れない場所に冷蔵庫を置くと、放熱が十分に行われず冷却効率が下がるのに加えて、電気を無駄に消費することになります。
過剰なエネルギー消費によって冷蔵庫本体の劣化も進んでしまうため、冷蔵庫の放熱スペースを取扱説明書で確認し、必要なスペースを確保できる位置を選びましょう。
冷蔵庫は引っ越してから搬入するため、いざ設置するという段階になって「扉が開けにくい」「思ったよりもキッチンが狭くなった」といった後悔につながるケースがあります。
引っ越す前の下見の段階で冷蔵庫スペースの目安を決めたら、冷蔵庫が余裕を持っておけるか、スペースの寸法を測っておきましょう。
冷蔵庫の配置で失敗しないために知っておきたい3つのポイント
引っ越した時や冷蔵庫を買い替えた時、「ものの出し入れがしづらい」「扉が開け閉めしにくい」など思わぬ失敗をしてしまうことがあります。
設置してはじめて気づく「しまった!」を防ぐために、事前に確認しておくべき3つのポイントをご紹介します。
・冷蔵庫扉の開閉方法
・冷蔵庫のサイズ
・コンセントの位置
それぞれ解説します。
冷蔵庫扉の開閉方法
冷蔵庫は毎日家族が頻繁に使うキッチン家電ですので、扉をスムーズに開閉できることが重要です。
配置を考える時は、冷蔵庫の扉の開閉方法を必ず確認しましょう。
特に注意したいのは、片開きの場合の開閉方向です。
冷蔵庫の横に壁がある場合には、壁の方向に向かって扉が開く冷蔵庫を選ぶと、中のものを取り出す時壁が邪魔になりません。
冷蔵庫のサイズ
周囲の食器棚やキッチンカウンターよりも冷蔵庫が飛び出した状態で並んでいると、せっかくデザインにこだわってキッチンを一新しても残念な仕上がりになってしまいます。また、問題は見た目だけではありません。
冷蔵庫の飛び出しが1cm程度ならあまり影響はありませんが、1cm以上飛び出ていると足を引っかけてしまう危険性が高くなります。隣に置いた食器棚やキッチンカウンターの収納扉が冷蔵庫にぶつかって全開できず、物の出し入れが難しくなる可能性もあるでしょう。
使い勝手が悪くならないよう、冷蔵庫のサイズをあらかじめ測っておいてからプランニングすることをおすすめします。
コンセントの位置
リフォームの場合、キッチンレイアウトを変更すると、冷蔵庫とコンセントの位置が合わなくなることがあります。
リフォーム後に置きたい冷蔵庫の位置と、元々あるコンセントの位置が遠くなりすぎないか必ず確認しましょう。
特に避けたいのは、冷蔵庫を設置したい位置にコンセントがない状態です。
キッチンレイアウトを考える時に、電子レンジや炊飯器などのキッチン家電用コンセントと合わせて冷蔵庫用コンセントの位置を確認し、ない場合は増設を検討しましょう。なお、コンセントの移設や増設はリフォーム工事として対応する必要があります。
壁紙を撤去して壁下地の調整と同時に配線し、新しい壁紙を張るという一連の作業が必要ですので、手配を忘れないようにしてください。
冷蔵庫のおすすめ配置方法3選!それぞれのメリット・デメリットは?
冷蔵庫の最適な位置は家族のライフスタイルによって異なります。
代表的なレイアウトを3つご紹介しますので、検討時の参考にしてください。
・キッチン入口
・キッチンの奥
・パントリー内
それぞれのメリット・デメリットを解説します。
キッチン入口
ダイニングやリビングからキッチンの入口に冷蔵庫を置くレイアウトは、家族全員が使いやすいのが特徴です。
〈メリット〉
・家族みんなが利用しやすい
・食後に飲料や調味料などの片付けが楽にできる
〈デメリット〉
・片開きタイプの冷蔵庫の場合、扉がキッチンの通路をふさいで通りにくくなる可能性が高い
・ダイニングやリビングから冷蔵庫の中が丸見えになる
キッチンの奥
キッチンの背面、特に一番奥の壁際に冷蔵庫を置くレイアウトは、調理中の動線がコンパクトになりやすいのが特徴です。
〈メリット〉
・冷蔵庫が目立たず圧迫感を感じにくい
・効率の良いレイアウトができる
〈デメリット〉
・2人での調理作業時、物が取り出しにくい時がある
・近くに窓がある場合、直射日光が当たる可能性がある
パントリー内
食品や日用品のストックを収納するパントリーの中に冷蔵庫を置くレイアウトは、外から冷蔵庫が見えないためキッチンがすっきりした雰囲気になります。
〈メリット〉
・生活感を見せずにおしゃれな空間を維持できる
・キッチンを広く使える
〈デメリット〉
・冷蔵庫を置くスペース分だけパントリーの収納量が少なくなる
・キッチンから冷蔵庫までの距離が長くなることで調理作業の効率が低下し、不便に感じやすい
いずれのレイアウトもメリット・デメリットがありますので、キッチン全体の間取りやダイニング・リビングとのつながりを考慮しながら選択しましょう。
キッチンの作業効率をあげるなら冷蔵庫だけでなく収納力や作業動線を意識しよう
キッチンでの作業効率を上げるためには、冷蔵庫の位置に加えて食器棚やキッチンカウンターの配置にも注目し、キッチン内の作業動線がスムーズかどうかを意識することが必要です。
・効率の良いキッチンを作るには「ワークトライアングル」を意識しよう
・通路幅は 60cm から 140cm を確保しよう
・収納力を意識しよう
それぞれ解説します。
効率の良いキッチンを作るには「ワークトライアングル」を意識しよう
キッチンの作業効率を上げるということは、キッチンで調理する時の動き方をコンパクトにするということです。
キッチンの作業効率をチェックする指標のひとつが、シンク・コンロ・冷蔵庫の3点を結んでできる三角形「ワークトライアングル」です。
ワークトライアングルの3辺の長さを合計した数値が360cmから600cmの範囲だと、効率的な調理動線になると言われています。600cmより長いと調理中に3点の間の移動距離が長くなって非効率です。
逆に360cmより短いと、調理スペースが狭くなったりキッチンに立ったすぐ後ろに冷蔵庫が来る形になったりして、動きが制限されてしまいます。
キッチンのレイアウトを考える際に図面上で3点の距離を測ってみて、適したワークトライアングルの寸法になっているかチェックしましょう。
通路幅は 60cm から 140cm を確保しよう
人が動くための領域は、人体寸法と動作寸法の双方を考慮する必要があります。
人間工学の視点から見ると、成人1人が正面を向いて歩く場合60cm以上、両手で物を持って歩く場合は75cm以上の通路幅が必要です。成人2人がすれ違う場合、1人が横向きになるなら90cm以上、2人とも正面を向くなら120cm以上の通路でないと通りにくくなります。
家族が多い、体格のいい家族がいるという場合は140cm程度を確保するのがおすすめです。
キッチン内の通路とキッチン横の通路それぞれの幅をどれだけ確保したらいいか迷ったら、これらの数値を参考にしてください。
「2人で調理する機会が多いからキッチンと背面の食器棚や冷蔵庫との間は120cmは必要だな」
「通路横は1人通れたらいいから75cmあればいいね」
といったように、レイアウトの計画がしやすくなります。
通路幅でもっとも問題が起きやすいのは、廊下からキッチンに入る通路です。
引っ越しや買い替えの際に冷蔵庫の搬入や搬出で通るため、冷蔵庫の外形寸法や冷蔵庫を抱えて運ぶための動作を考慮しておかないと、冷蔵庫が入らない・廃棄したいのに出せないといった問題が起きてしまいます。
廊下からキッチンに入る通路の幅は特に念入りにチェックしましょう。
収納力を意識しよう
キッチンは食材やキッチンツール、食器・キッチン家電などたくさんのものが混在する空間です。使用頻度に応じて出し入れしやすいよう、収納力があるプランをつくることを意識しましょう。
収納力が低いキッチンだと、必要なものを十分に収納できず、乱雑な状態になって調理作業がスムーズに進められません。掃除もしにくくなって衛生面が気になる上に、怪我をする危険性も高くなります。
十分な収納スペースが確保できること、単に収納するだけでなく機能的に使えることが重要です。
綾野製作所の食器棚は、収納力・機能性ともにご満足いただけるバリエーション豊富なプランが実現できます。
決められたスペースにぴったりとすき間なくフィットさせることができるため、無駄な部分を作ることなくスペースをしっかり有効活用できます。
綾野製作所のこだわりにつきまして、詳細は下記ページをご覧ください。
まとめ
冷蔵庫の位置を工夫して快適に使えるキッチンにしよう
冷蔵庫の位置は、キッチン全体のレイアウトや動線を意識して決めることが大切です。
コンパクトな広さの一戸建てのキッチンや、スペースの余裕が少ない賃貸住宅のキッチンでは、限られたスペースを最大限に活用し、冷蔵庫とコンロ・シンクとのバランスを取りましょう。
直射日光やコンロの熱の影響を受けにくい場所や、冷蔵庫の放熱スペースを確保できる場所に設置して、無駄な電気代がかからないよう配慮することも忘れずに。
この記事を参考に、自分にとって使いやすい冷蔵庫の位置を決め、快適なキッチンづくりを進めてください。