食器棚を使用しているうちに、いつの間にか、引出しのなかが煩雑になっている。そういうこと、ありますよね。たとえ片付けたとしても、時間が経つとなぜか再び使いづらくなるという……。どうすれば、快適な引出しをキープできるのでしょうか?
この永遠の問題(?)について、今回はインスタグラムで約7万人のフォロワーを誇る、整理収納アドバイザーのNANAKOさんにお聴きします。
「“好き”だけに囲まれたシンプルライフ」を実践し、美しく整った収納術が注目を集めているNANAKOさんは、AYANOの食器棚を長年愛用してくださっています。キッチン全体も、引出しのなかも実に綺麗で、うっとりするほど。引出しを実際に見せていただきながら、引出し収納のハウツーを伝授していただきます。美しくオシャレで、使いやすいキッチン収納に憧れる皆さんは、必読です!
使っていないものを、引出しに入れている場合ではない
──NANAKOさんは、「“好き”だけに囲まれたシンプルライフ」をモットーに、お家のなかをとても美しく整えていらっしゃいます。食器棚の引出しの整理整頓において、心がけていることは何ですか?
私が心がけていることは、「今」を大事にすることです。
「自分の動線に合わせて収納場所を決める」「引出しの中を仕切る」。これらももちろん大切ですが、私が整理収納で一番重要視しているのは、「今」です。過去でも未来でもなく、今使いやすいのか、今好きか、今本当に必要か?という観点でものを選んで、整理収納を考えるようにしています。
──「今」ですか!たしかに、それは大切なポイントかもしれません。ものがあふれて片付かないという場合、「過去」のものが混在しているからというパターンは、大いにありますね……。
そうですね(笑)。たとえば我が家の場合、小学生の娘がいるのですが、幼稚園生の頃はお弁当が毎日必要なので、お弁当箱は取り出しやすい位置の引出しに入れていました。でも、小学校に上がってからは給食が出るので、お弁当箱は必要なくなります。
なので、その引出しには、今はおやつ用のお皿やコップを入れています。娘が自分でおやつの準備ができるように、カスタマイズしたんです。
使っているものと使っていないものが一緒に入っている。これが、一番使いにくい原因です。スペースは限られているので、常に「今」に着目する。使っていないものを引出しに入れている場合ではないんです。
──確かに、使っていないものを入れている場合ではないですね……。とは言え、引出しには、なぜか不要なものが増えていってしまいます。どうすればいいのでしょうか。
時々は見直しが必要ですよね。お子さんがいるご家庭の場合、子どもの成長につれてプラスチック製のコップは使わなくなるなどの変化が生じます。また、子どもは身長が伸びると目線が変わるので、使いやすい位置の引出しも変わってきます。
お子さんが小さいうちは成長が早いので、1年に1回ほどは見直すといいかもしれませんが、使いにくくなってきたなと思うタイミングで、その原因を考えるといいでしょうね。
最も使う「一軍」を、一番取りやすい場所に
──「今」を重視しながら、NANAKOさんはどのように食器を収納なさっているのか、具体的に教えてください。
食器棚においては、一軍二軍方式を最も大事にしています。
──一軍、二軍とは?
一軍は、毎日使うもの。もしくは、2日に1回、3日に1回はかならず使用する主役級のもののことです。それらを、自分が一番使いやすい高さの引出しに入れます。
一般的には、食器を収納する際は種類別に入れがちですよね。たとえば、この棚には平皿、この引出しにはお茶碗系という風に。でも、私は取り出しやすさと戻しやすさを重視しているので、一軍のものは全部同じ段に入れています。
──実際には、どのようにすると良いでしょうか?
下キャビネットの一番上の引出しに、カトラリー類と、お箸、箸置きなどを。その下の段に、毎日使うごはん茶碗、お味噌汁のお椀、サラダの小鉢、取り皿などを入れています。この2段分が我が家にとっての一軍で、基本的にはこの引出しばかりを開け閉めしています。
──手前にあるお皿は、立てて収納しているのですね?
はい。ディッシュスタンドに立てています。重ねるほうが量は圧倒的に入るのですが、私は使いやすさのほうが大事なので、この収納方法にしています。立てれば、引出しの高さをマックスまで使える利点もありますし。
どういうものを一軍と捉えるかは、ご家庭によって違いますよね。たとえば、食洗器を毎日使うのであれば、食洗器で洗えるものが使用頻度は高いでしょうから、それが一軍になると思います。そのあたりのことを認識してから、一軍を決めてもいいですよね。
とことんゆったりと配置することを心がける
――三番目と最下部の引出しには何を入れているのですか?
三番目には、二軍の食器が入っています。頻繁に使うわけではないけれど、週に1、2回は活躍する煮物のお皿や丼、水筒などを。
そして一番下の引出しには、年に1回、お正月にしか使わないようなお椀やお皿などをしまっています。ここに入れておけば、来客のときに利用することもできるので便利です。ちなみに、この段にあるものは登場回数が少ないので、平皿も重ねて収納しています。
AYANOの食器棚の引出しは、たくさん食器を入れて重くなってしまってもスムーズに開け閉めができて、動きが滑らかです。引出しを戻す時に勢いよく『ガチャン』といくことがないので、安心です。
――ちなみに、上キャビネットの収納はどうなっているのですか?
左側の引き戸のなかの、一番下の段には、お皿を立てて収納しています。真ん中の段には、まげわっぱを。家で仕事をする際は、朝食の余りをこれに入れて、お昼に食べたりしているんです。プラスチックの容器より、まげわっぱのほうが気分が上がるかなと思いまして。
右側の引き戸のなかには、マグカップやグラスを並べています。
――ひとつひとつがオシャレで、きれい。インテリアショップみたいですね!
ものは結構あると思うのですが、しまいやすさと取り出しやすさだけを考えて、とことんゆったりと配置することを心がけているんです。
AYANOの食器棚の引き戸は、指一本で開けられて、音がとても静か。朝トーストを食べる際の食器の用意は、引き戸をすっと開けて、ディッシュスタンドからお皿をさっと取るだけで済みます。大変快適です。
――本当に好きなものだけを、使いやすい場所に置いて、大切に使用なさっている印象を受けます。
そうですね。皆さんにもぜひ試していただきたい方法があって、それは、ご自宅にある食器をひとつひとつよく見て、「これは、今本当に好きかな。出番は多いかな」と考えることです。そして、本当のお気に入りだけを食器棚に入れて、残りのものはひとまず外に出しておいて、2、3日は、ゆったりと配置された食器棚の状態で過ごしてみてほしいんです。
一度その快適さを知ると、こっちのほうが絶対にいい!ということに気づいていただけると思います。この作業を行うと、食器を結構手放せる方が多いです。
――「いる」「いらない」という風に仕分けをするのではなく、自分のお気に入りのものを最優先して、美しい状態を作ることから始めるのですね。そのほうが、片付けを前向きに進められそうです。
そうなんです。やる気が出ますよ(笑)。それから、食器を食器棚に戻すのって、こんなに楽だったのかという驚きを得られますし、その後の食器の買い方も変わってくるはずです。
私の場合、以前、気に入っている器を手放した際、心を痛めた経験があるんです。なので、新しい食器を買う際はとても考えます。そして、買うとしたら、どこにしまうのかもイメージしてから購入します。買ったあとに収納場所に困ってしまったら、また何かを手放さないといけないかもしれないですから。
“好き”に囲まれると、心が豊かに
──自分がどれくらいのものを持っているかということも、わかっておくとよさそうですね。
自分が管理できる物量を知って、引出しに入るサイズもだいたい把握しておくといいと思います。そうすれば、「新しく買った食器が引出しに入らない!」という事態を招かずに済みます。
食器棚の収納スペースは無限ではないので、そのなかで自分がどう管理できるかということを考えるといいですね。
──引出しを有効活用するために、収納グッズは多用するほうがいいのでしょうか。
スプーンやフォーク、お箸のように、サイズがだいたい同じものに関しては、カトラリーケースを使うといいと思います。それから、棚の段を上下で区切れるような、コの字型のラックもおすすめです。どちらとも、幅を変えられるタイプも市販されていますから、便利ですよ。
ただ、収納グッズは、それほど重視しなくていいのではないでしょうか。食器棚は狭いスペースなので、そこに収納グッズやボックスを入れ込み過ぎると、そのサイズに縛られて食器を収納しづらくなる場合がありますから。
──そういえば、NANAKOさんのお宅のキッチンカウンターやシンク周りには、余計なものが何も置かれていませんね。たとえば、食パンや薬、サプリメントなど、毎日使うような細々としたものはどこに収納しているのですか?
それは、ブレッドケースに全部入れています。シリアルやバナナ、パン、ハチミツ、サプリ類など、毎日使うものはすべてここに。引出しのような役割を果たしてくれて、とても便利ですよ。
──すべてが整然としていて、憧れます。最後に、食器棚の引出しの整理にこれから取りかかりたいという人に、アドバイスをお願いします。
たとえば、食器棚を新しく買い替えるなど大きなプランがあるのであれば、持っている食器をすべて外に出して、見直すという作業はおすすめできます。ただ、それをやるとなると、時間も体力もかなり必要になるので、まずは小さなことに取り組むといいのではないでしょうか。
「今日はコップだけを整理してみよう」「今日は、コンビニでもらった、割りばしやスプーンだけを片付けてみよう」などと、カテゴリー分けして整頓する方法もよいと思います。少しずつでも着手すれば、確実に前に進めるので。
“好き”だけに囲まれて、使い勝手のよい暮らしを実践すると、毎日が快適で心が豊かになりますよ。ひとつずつ、ぜひ、試してみてくださいね。
取材協力:整理収納アドバイザー NANAKOさん
夫と娘の3人暮らし。外資系アパレルブランドにて10年勤務し、夫の転勤に伴い退職。多くの引っ越し経験と前職を生かし、現在は整理収納アドバイザーとして活動。
◇保有資格
・整理収納アドバイザー1級
・ビジュー式片付けカードワーク インストラクター
テレビや雑誌、Web連載、書籍など多方面にて活躍中
インスタグラムはこちら>@nanako_original_living
NANAKOさんご愛用のキッチンモデルは『JEWEL』です。
※現在は製造を終了、『JEWEL』後継シリーズは『SW(スタイン)』です。