整理収納アドバイザーが指南!食器棚の収納【心構え・準備編】

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食器棚を買ったものの、お気に入りの食器や家電を上手に収納できずに困っている……。そういう人は多いのではないでしょうか。そこで今回は、数多くのお宅の整理収納を手掛け、セミナーや講演でも活躍中の整理収納アドバイザー、西口理恵子さんに、食器棚の収納術を教えていただきます。

兵庫県芦屋市の、西口さんのお宅のキッチンをリモートで拝見しながらのお話は、実用性豊かなものばかり。関西弁を交えながら、ユーモアたっぷりにノウハウを伝授してくださいました。読むだけで、片付けがしたい! と思えるはず。第1回目は、『食器棚の収納 心構え・準備編』です!

 

ものには「住所」が必要。そして「番地」まで決めることが大事

──食器棚を使っていると、食器を取り出しにくい、すぐに必要なものが見当たらない……など何かと不便なことが出てきます。それは、なぜなのでしょうか?

食器棚だけでなく、どこを片付けるにしても同じことが言えるのですが、最も大事なポイントをお伝えしますね。それは、

・定位置の決定
・適正量の決定

このふたつに尽きます。

これらを決めないと、ものが出しづらくなったり、探す時間が発生してしまうんです。

──たしかに。そこにあると思っていたものが存在しなかったり、いつの間にか食器棚が満杯でぎゅうぎゅう詰め! そういう事態に、よく陥ります。

そうなんです。では、そうならないための方法をお教えしますね。

まずは、定位置について。

私は「ものには住所が必要」だと考えています。しかも、ぼんやりした場所ではなく「番地」まで決めることが大事で、たとえば、どの引出しの、どのボックスのなかに入れるのかということまで決定するんです。

ただ、忙しくて片づけができなくて、定位置をすぐに決められへん……と迷うもの、ありますよね。先ほど「番地」を決めるとお伝えしましたが、それにプラスして、そういう、どんなものでも入れてオッケーの「一時保管スペース」も作ってみてください。私は食器棚の一部にカゴを入れ、その場所を確保しています。

カゴにいったん入れておいて、時間があるときに整理すればいいんですから。そうすれば、雑然とした状態にならないですし、「ひとまず大丈夫」と思えるので心にもゆとりが生まれます。

──なるほど。あまりにもきっちり決めすぎないほうがよい場合もあるんですね。では、次は「適正量の決定」について教えてほしいのですが、適正量を決めるのって、難しそうですね……。

そう思う人は、多いです。ただ、たいていの人が、適正を大幅に超える量のものを持っているために、片づけや整理に苦労していると言えます。

たとえば、4人家族のお宅に伺って、「飲み物を入れるコップを、テーブルの上に全部出してください」とお話しすると、テーブルの上は飲み物の器だけで埋まることがあります。

4人家族なのに、マグカップが15個もあるとか(笑)。それにプラスして、ワイングラスにビールジョッキに、ガラスのコップなどなど。最近は100円ショップなどのリーズナブルな値段のお店で、簡単にものを買ってしまうこともあると思います。でも、適正量を決めていないと、ものは増える一方。

あ、とはいっても、私は、ものが多いのは悪いことだとは思っていないですよ。私も服が大好きですから、たくさん持っていたいという気持ちはわかります。だけど、適正量を決めると、厳選したものしか家に入ってこないので、結果として「好きなものしか持っていない」という幸せあふれる住まいになるんです。

 

適正量を決めて、それでいったん暮らしてみる

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──適正量は、どうやって決めればいいんですか?

5つの「量」を把握することから導き出します。
・想像の量
・実際の量
・入る量
・持ちたい量
・必要な量
以上です。

想像の量とは、「あなたは飲み物の器を何個持っていますか?」と聞かれたときに、その問いに対して答える量ですね。「30個ぐらいかな」と思ったら、それが想像の量です。

そして、実際の量とは、棚から全部出して数えた量。「30個と思っていたけど、子どものコップを入れたら50個もあるわ!」という具合に、想像の量を超えるケースがほとんどです。

入る量は、食器棚にむやみに重ねたりせず、使いやすいように収納して、何個入るのかを実際に試した際の量。

持ちたい量はそのままの意味ですが、たとえば、「将来は紅茶教室を開きたいんです」という人はたくさんの食器を持っていると思います。そういう場合は、将来を見越して所有しておきたい量が、その人にとっての持ちたい量です。

必要な量は、この量さえあれば生きていける、という最小限の量。

これらの5つの「量」を書き出すと、自分の適正量が見えてきます。

つまり、家にある飲み物の器は30個ぐらいだと思っていたけど、実際は50個あった。
それで食器棚に並べてみたら、28個がいい感じに収まった。
でも、そんなになくてもいいかな? 24個あれば充分かも? と思ったら、そのお宅にとっての必要な量は24個ということになります。

だいたいこれくらいの量が必要かなと、いったん決める。そして、それを守ってみる。でも、やっぱりもう少しあるといいなと思ったら、適正量は変更してもいいんです。

 

「捨てよかな 思った時点で いらんもの」

――食器棚を整理していく方法がだいぶわかってきました。整理整頓をするには、何にせよ、自分がどれほどの量を持っているのかを確認しないといけないのですね。

おっしゃる通りです。そして、棚からものを全部出したときは、種類別に分けていただきたいです。

私が整理収納でいろいろなお宅を訪問すると、たいていのかたが、次のような発言をします。種類別に並べた食器たちを見ると、「小皿が40枚もあるのか!」と現実を知り、そうすると、こちらからは「捨てましょう」なんてひと言も発さないのですが、自然と、「これ、捨てようかな……」という言葉が出てくるんです。

この瞬間、私は、五七五の句をお客様にお伝えします。

――句、ですか?

「捨てよかな 思った時点で いらんもの」。

――うわ、まさに! そう言われてみたら、「捨てよかな」と思うものは、まったく使っていなかったり、必要のないものが大半です!

そうですよね。ただ、このときに重要なのは、「捨てるものを探す」ことを目的にしないでほしいんです。整理するときは、好きなものを選んでいただきたい。

だって、人生は一回しかないんですから。家のなかのすべてのものを「好きだから使う」もので満たしてほしいです。

実際のところ、お客様は、自分が持っているものをざーっと並べると、使いやすいものや好きなものを無意識に選びます。たとえば、レンジでチンしやすいマグカップとかね。ゴールドの縁付きの高級なマグカップを持っていても、結局使わんから、これはいらんかも、となる(笑)。

その人なりによく使う、使わない、の基準があるんです。それから、使っていないけど、「子どもにもらったマグカップやから捨てられへんねん」というものもあります。それは、好きなものだから取っておけばいいんです。

 

「不要」「取っておく」を繰り返すと、心が整理される

──もったいないから捨てるのは抵抗があるなあ……と思うことも、よくあります。

そうですよね。たとえば、スーパーでもらう割りばしとかね? その気持ちは、私にもわかります。

あるとき、割りばしをいっぱい溜めているお客様がいらしたので、聞いたんです。
「何のために溜めてるんですか?」
そしたら、
「友達が来たときに使えるかなと思って」
「ちなみに、今はコロナの影響で人をあまり家に呼べないと思いますけど、それ以前は一年間に友達何人来てました?」
「……ふたり」
と(笑)。

捨てられないという、お客様の気持ちも理解できますよ。
でもね、やっぱり、「これは不要」「これは好きだから取っておく」という動作を繰り返すと、見た目も整然としていくし、心も整理されていくんです。

──食器棚に入っているものの全体量を把握して、不要なものは処分する。そのほかに、整理上手になるためのコツはありますか?

新しくものを買うときは、何か一つ同種類のものを捨ててから買う、ということですね。当たり前のことですけど、ものが増える人というのは、減らさないから増えるんです。世のなかには素敵なものがいっぱいあります。そのなかで、うわっ、これは欲しい!と思えるものに出会ったら、家にあるものを捨ててまでして、それが欲しいのか。そこを考えるといいと思います。新しいものをひとつ入れたら、ひとつは外に出す。「One in one out」の考えが必要ですね。

 

毎日使うものは、一ヶ所にグルーピング

──適正量を維持するための、「One in one out」が大事なんですね。そうやって適正量を定位置に置いておけば、もうすっかり、整理上手になれそうですね!

気持ちよく片付きます。でも、使用のしやすさを考えると、それだけでは足りないです。次に必要になってくることは、「ものの場所が、自分の動作と動線に合っているかどうか」です。

例を挙げると、あるとき、お客様のお宅に整理収納のサービスに行った際、キッチンにある踏み台が気になりました。手が届かない場所や、吊戸棚を開けるときに使っているようです。

「どれくらい使っていますか?」と聞くと、「毎日」とおっしゃるんですね。それはよくないケース。なぜなら、お客様の動作動線に合っていないところに、毎日使うものが入っているということですから。

このとき、お客様は私にコーヒーを淹れてくださいました。踏み台に乗って、頭の上のほうの場所からコーヒーの豆を出して、違う引出しからコーヒーフィルターを出して、また別のところからカップを出して……。結局、6ヶ所の扉や引出しを開けて、コーヒーを淹れてくれたんです。「こうやって、コーヒーは毎日飲んでます~」と(笑)。

このように、動作動線に合っていない収納をしてしまうと、管理ができなくなったり探し物が多くなったりします。なので、毎日使うものは一ヶ所に集めてグルーピングしておくことがおすすめです。アクション数は少ないほうがいいですから。

──そのほうが効率的ですよね。

毎日のことですからね、あっち行ったりこっち行ったりする時間は省きたいです。我が家の場合は毎朝食パンを焼くので、トーストに塗るバター、あんこ、ジャムはひとつのトレイにのせて、冷蔵庫の定位置に置いてあります。

それから、朝食用のお皿はいつも同じで、大人用の2枚と子ども用の2枚を、私の目の位置の高さに置いています。毎日使うものは、手がすぐに届く場所に置くことも鉄則です。目の位置の高さは、ものを出し入れしやすいゴールデンゾーン。ここに、しょっちゅう使うものを置いていないのは不便です。

ものに人間を合わせるのではなく、人間の動きにものを合わせる。
もの中心の住まいではなく、人間中心の住まいに!
そのことを、整理収納の際には心がけています。

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──わかりました! 整理収納の心構えと準備についてかなり具体的な話をお聴きできて、食器棚を早く整理したくなってきました。今回のお話を踏まえて、次回は、食器棚とキッチンの、理想的な収納方法やコツについて教えてください。

承知しました。お任せください!

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食器棚の収納『心構え・準備編』まとめ

  • 「定位置」と「適正量」を決める。
    これらを決めないから、ものは出しづらくなり、探す時間が発生する。
  • ものには住所が必要。
  • 「想像の量」「実際の量」「入る量」「持ちたい量」「必要な量」を書き出すと、 「自分の適正量」が見えてくる。
  • 「捨てよかな 思った時点で いらんもの」
  • 「捨てるもの」を探すのではなく、「好きなもの」を選ぶ。
  • 新しくものを買うときは、それに似ているものを捨ててから買う。 「One in one out」の考えが必要。
  • ものの場所が、自分の動作と動線に合っているかをチェックする。

 

nishiguchi_prof取材協力:西口理恵子さん

株式会社インテリアR 代表取締役
1979年大阪生まれ、兵庫県芦屋市在住。

「モノの整理は、心の整理」。そのお手伝いをしたいとの思いから、2009年「インテリアR」を創業。整理収納・インテリア・美を総合した【美人収納®】考案者。全国の住宅・オフィスで直接指導している。
セミナー・講演の受講者は延べ17,000人超(2019年10月現在)。著書に「ずっと美しく暮らす シンプル収納の家づくり」その他多数。2019年に中国でも出版。Blog「1日1収納」は1日1万アクセス超。Blog・Instagram・Twitter等のSNS総フォロワー数1.4万人超。
プライベートでは2児との4人家族。時間整理も得意。”上質なワーク・ライフ・バランス”へのファンも多い。

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